傾聴とは?

この記事は7分で読めます

最近、「傾聴」という言葉をよく耳にする方も多いかと思います。それでは、傾聴とは、一体どういうものなのか?について解説させていただきます。

 

目次

傾聴とは?

傾聴とは、目の前の相手の話を否定することなく、目と耳と心を傾けながら、相手の話を聴く、カウンセリング技法のひとつです。傾聴と言えば、アメリカの心理療法家カール・ロジャース氏が提唱した心理療法である「来談者中心療法」が有名です。専門的に言えば、この「来談者中心療法」が傾聴の基本と言えます。来談者中心療法については、後ほどご説明いたします。

 

傾聴とは、「ただ、話を聞けばいいだけ」という理解をしている方が多いですが、傾聴とは、決してそのようなものではございません。まず前提として、話を聴く側が、フラットな気持ちで、相手に共感をして、信頼をしている、ということを自ら示していくということになります。この姿勢が無いと、相手は心を開いて、話そうとは思いません。相手との信頼関係の構築はもちろんのこと、傾聴を通して、自分自身を知り、さまざまな感情のコントロールを促すことで、成長することができます。そして、相手の話し方や表情、しぐさ、姿勢などの言語化しにくい部分も感じ取ることで、相手からの信頼の獲得にも繋がります。

傾聴の目的

傾聴の目的は、相手が伝えたいこと、言いたいことを汲み取るように聴いて、相手のことを理解することです。伝えたいことや言いたいことは、相手からしたら、伝えずらかったり、言いにくかったりすることが多いので、非常にセンシティブに扱わなければなりません。否定したり、議論したり、ジャッジしたり、アドバイスをすることが目的ではありません。あくまでも、相手が伝えたいこと、言いたいことを汲み取るように聴いて、相手のことを理解することが目的です。この目的は忘れないでください。

傾聴から得られること

傾聴をすることで、相手が安心感を持って、話をすることができるので、自然と相手も自分のことを理解することにも繋がります。ということは、より良好な人間関係を構築することができるのです。自分から話をするのではなく、相手の話を聴く側になることで、相手から信頼を得ることができるのです。傾聴は人間関係で悩んでいる方であれば、どなたでも積極的に使えるカウンセリング技法なので、まずは身近なところから試してみることをお勧めします。

傾聴の定義

傾聴とは、どういうものかご理解いただいたかと思いますので、ここで改めて、傾聴の定義について考えてみます。私も様々な文献を読みましたが、私自身一番理解がしやすかった傾聴の定義をご紹介いたします。

 

「傾聴とは、相談者がご自身の悩みに直面した時に、苦しむことを前提として、傾聴カウンセラーが心の声に耳を傾け、相談者が多くの気付けを学びを得て、自己成長を遂げていく過程である」

 

こちらは、私自身が考えた定義となりますが、相談者が苦しむことに対して前向きに捉え、傾聴カウンセラーが寄り添いながら苦しみのプロセスを歩んでいく、というイメージが持っていただければ、今はそれでよろしいかと思います。相談者が苦しんでもいい、ということが前提となりますので、傾聴カウンセラーは、その苦しみに寄り添うということになります。

来談者中心療法とは?

先ほど出てきました、「来談者中心療法」ですが、ここで来談者中心療法について解説いたします。来談者中心療法とは、アメリカの心理療法家カール・ロジャース氏が提唱した心理療法です。傾聴は、この来談者中心療法の聴き方とほとんど一緒になります。具体的にどういうことかと言いますと、非指示的療法と言われている、①「あいづち・うなずき・くりかえし」と②聴き手の人間性(受容・共感・自己一致)を合わせた聴き方ということになります。ポイントは、この2つが揃っていないといけないと言うことです。

 

例えば、相談者の話をあいづちを打って聞いていても、共感をしていない、ということであれば、傾聴をしたことにはなりませんし、相談者もそれをはっきりと見抜きますので、良好な人間関係の構築には繋がりません。ここは是非気を付けていただきたいところです。

カウンセリングとは?

カウンセリングという言葉は良く聞くかと思いますが、それではここで、カウンセリングについて解説していきます。カウンセリングとは、相談者と対話を中心にして進めます。対話を通して、相談者の悩みを深く掘り下げて、解決への気付きを探すことです。ここで大切になるのは、相談者の主体的に悩みを解決するという意思が必要になるということです。対話と言っても、相談者のことが分からないといけないので、最初はカウンセラーは、相談者に対して、傾聴を行います。この傾聴の内容に基づいて、対話をしていくのが、通常一般的に考えられているカウンセリングになります。カウンセリングの視点から言えば、傾聴とは、カウンセリングを行う第一段階と考えられます。

カウンセリングの定義

それでは、傾聴と同じ様に、カウンセリングの定義について考えてみます。カウンセリングの定義についてご紹介いたします。

 

「カウンセリングとは、相談者がご自身の悩みに直面した時に、苦しむことを前提として、カウンセラーが心の声に耳を傾け、相談者が多くの気付けを学びを得て、自己成長を遂げていく過程である」

 

お気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、実は、傾聴とカウンセリングの定義はほぼ一緒になります。見比べてみるとお分かりかと思いますが、傾聴という言葉をカウンセリングにおき替えただけです。概念的な話になりますが、傾聴もカウンセリングも、基本的には一緒です。なぜならば、先ほどもお話した通り、傾聴とは、カウンセリングを行う第一段階であるからです。傾聴をしないと、カウンセリングはできないということになります。だから、傾聴という工程は非常に大切になりますし、まして省くことはできません。

傾聴とカウンセリングは、何が違うのか?

言葉の定義上は変わりませんが、傾聴とカウンセリングは何が違うのか?ということことについて解説いたします。まず、簡単に言いますと、「目的」そして「前提」が違うということです。違いとはこれだけになります。ですが、この「これだけ」に大きな違いがあって、多くの人が誤解をしているところでもあります。具体的にこの違いについてご説明いたします。

 

傾聴とは、相談者の悩みに対して、傾聴カウンセラーは一緒にどん底まで着いていき、同伴者として側にいることしかできない。つまり、悩みの解決ではなく、寄り添い、支えることなります。ということは、悩みに対して心の状態がマイナスであるならば、傾聴をしてもマイナスのまま変わらないということになります。

 

それに対して、カウンセリングとは、傾聴というステップを踏むことで、相談者の悩みに対して抱えている問題や課題について、深く聴き、そして対話をすることで、問題や課題を解決するということになります。そのため相談者の主体性が無いと成り立ちません。カウンセリングは、悩みに対して心の状態がマイナスであるならば、マイナスからゼロの状態に持っていくということになります。つまり心の状態がゼロになったということは、課題が解決したということになります。

相談との違いは?

カウンセリング(傾聴を含む)と相談の違いについて聞かれることがあります。相談というのは、問題解決のために話し合ったり、他人の意見を聞くことです。確かに、カウンセリングは対話はしますが、対話と話し合いは違います。相談とは、話し合いであり、他人の意見を聞くことです。ということは、非常に曖昧な状態であるということになります。曖昧な状態とは、解決するとは限らないし、解決しなくてもいい、ということです。そして、相談相手は、プロアマ問わず誰でも構いません。誰でもいいということであれば、当然問題解決はしないのが自然であって、問題解決をしたいのであれば、その道のプロに委ねるのが一番効率がいいです。相談する本人は、軽い気持ちではなくても、相談される側もそうとは限りません。相談という世界には、受容や共感という概念が無いので、無理もありません。本当に問題解決を考えているのであれば、相談はお勧めしません。

傾聴のメリットとは?

傾聴のメリットとして挙げられるのは、いきなり解決を求めなくていいということです。言い換えると、解決しない世界をそのまま受け入れ、肯定していいということです。モヤっとした想いや、ザワついた想いを抱えると、この想いを手放したくなるのは、人として自然なことだと思います。とにかく楽になりたい、早く解放されたい、とは思っても、課題の解決とかは今は未だ考えられない。実はこういう人は非常に多いです。課題の解決の前に自分の心を整えるというか、フラットにする必要があります。まずこのステップを踏まないと、先には進めません。焦らずにゆっくりとこのステップを踏むことに専念することが大切で、このステップに寄り添ってくれるのが、傾聴であり、傾聴カウンセラーであります。傾聴カウンセラーは、話を遮ぎることなく、相談者の話をじっくり聴いてくれます。そして、傾聴カウンセラーは、自分の先入観を外して、相談者の話の世界にどっぷり浸かってくれる存在です。

 

ということは、傾聴カウンセラーは、想像で決めつけることはないし、批判、非難、審判、判断、分析、深堀をすることもありません。あとは、善悪の判断や褒めたり、貶したりすることもありません。傾聴とは、無になれる世界です。そこには相談者を全面的に包み込む暖かさがあります。そこに相談者は信頼を寄せて、話すことができるのです。そして、解決することを求めていないので、相談者が今の自分のままで大丈夫なんだ!という肯定感を持つことができます。この状態で、自分の想いを少しずつ話していくことで、何となくですが、見えてくるものがあります。これが相談者の悩みの答えや本音、そして本質になります。自分が本当はどうしたいのかが分かれば、自ずと課題が見えてきます。

 

課題とは、現状と答えや本質、そして本音との差になります。この差を埋めていくことが、課題の解決になります。ただ、傾聴では、課題が分かるところまでで終了となります。なぜならば、傾聴とは、解決を求めない世界であるからです。傾聴だけで、相談者の満足度を得られることは非常に多いです。ただ、人によっては、課題が分かるだけで、自然と課題解決のための行動に移せる人もいますので、そういう場合は、相談者の意に任せて結構です。

傾聴のデメリットとは?

傾聴のデメリットとして考えられるのは、課題が分かったら終わってしまうので、その後は、曖昧な状態のままで終わってしまう、ということです。要するに、悩みは解決していないということです。ですが、傾聴とは、解決しない世界を善とする世界なので、これはこれで大丈夫です。いきなり解決を求めてしまうと、プレッシャーを感じてしまう相談者が多いので、あえて解決を求めないのです。それでも、自分自身を受け入れてもらえたという満足感があるからこそ、相談者の自己肯定感が高くなるので、相談者は悩みに振り回されることはなくなります。

 

もし、課題の解決を求めるのであれば、カウンセリングを受けてもらうことになります。相談者自身が自分ひとりで課題の解決ができないということであれば、カウンセリングをお勧めいたします。

カウンセリングのメリットとは?

カウンセリングのメリットは、先ほどご指摘しました課題の解決が可能になるということです。特に、プロのカウンセラーにお願いすることで、精神面のフォローをしてもらいながら課題の解決を実現することになるので、安心して取り組めます。1回のカウンセリングでは課題は解決しないことが多いので、半年間から1年間というまとまった時間のなかで、ゆっくりと課題の解決に取り組めます。本当の意味で、課題の解決をしたいということであれば、焦らずにある程度まとまった期間で、集中して行った方が、遠回りのように思えて、実は近道です。

 

ここで重要になるのは、何をもって課題が解決したのかという、最終ゴールを最初にちゃんと設定することです。おそらくプロのカウンセラーであれば、そこはちゃんと提示すると思いますので、その最終ゴールに向かって進んでいくことが、結果的に課題の解決に繋がります。そして、最終ゴールをクリアするために必要になってくるのが、より現実的なゴール、つまりスモールゴールです。毎回、まずできることとしてのスモールゴールを確認して、次回のカウンセリングまでに実際にやっていただき、進捗を確認する。できたこと、できなかったことをカウンセラーと対話しながら進めていく。そこで感じた不安や疑問などはちゃんとカウンセラーに伝えていくことで、心を整えていく。カウンセラーはちゃんとそこに向き合い、サポートをしてくれます。

 

お互いに信頼関係を作っていきながら、伴走者としてカウンセラーはサポートをします。また、カウンセリング以外の時に何かあればメールなどで対応してくださるので、そういうサービスがあれば活用することも可能です。

カウンセリングのデメリットとは?

カウンセリングのデメリットとして考えられるのは、途中で課題が変わったりすることです。そこは傾聴の段階でちゃんと話し切ることを徹底することが大事ではありますが、それができていない場合があったりします。

 

あとは、日々の生活環境の変化を通して、純粋に課題が別のところに自然と変化したりすることもあります。でもそれは、ある程度は仕方のないことでもありますので、決して恐れることもありません。日々生きていく中で、いろいろとあるのは当然のことなので、そこは柔軟に対応するのが賢明です。そういう場合は、ちゃんとカウンセラーにその旨話して、課題の変更をして取り組み直せばいいだけのことです。

 

カウンセラーは相談者の伴走者ですので、きちんと理解してくれます。踏み出した1歩は決して無駄にはなりませんので、そこは前向きに捉えましょう。

傾聴について、最後にお伝えしたいこと

今の世の中は、問題や課題を解決しないといけない、解決しないのは悪であり、そして解決することで、人は成長できるという風潮が強いです。傾聴とは、その風潮に対して風穴を開けることに繋がっていきます。傾聴を通して、社会や組織、様々な集合体を変えていことができます。なぜならば、人間関係が良好になっていくからです。悩みは複雑に絡み合あっているものですが、シンプルに考えると、人の悩みの9割は人間関係と言われています。それをまずは解決することを前提としなくていい。善悪の判断、批判、非難、審判、分析、深堀をすることなく、相談者の世界をそのまま受け入れることで、自分自身も受け入れられる。傾聴とは、とても素晴らしい世界です。そんな素晴らしい世界をあなたにも是非体験してもらいたいと思っています。

 

併せて、下記の記事もご覧ください。

「傾聴力とは?」

傾聴に必要な3つの基本スキルについて

 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

関連記事

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。

傾聴メルマガ登録 登録特典プレゼント中!

カテゴリー

アーカイブ

2021年4月
 123
45678910
11121314151617
18192021222324
252627282930