傾聴で得られる繰り返しの３つのメリットについて

傾聴における「繰り返し」というものが、立派なコミュニケーションスキルであることを、ご存じでしょうか。傾聴の場合、会話をしている途中で相手の方が発した言葉をそのまま繰り返すことが良しとされています。そんなコミニケーションスキルがあると聞いたことがある方はいないでしょうか。これは傾聴の「繰り返し」というスキルになります。

今日は、「繰り返し」という言葉を初めて耳にする方、繰り返しは知ってはいるけれど、やってみたら、違和感を感じるいう方に読んでいただきたい内容になっています。

「繰り返し」というコミュニケーションスキルの背景

「繰り返し」というコミュニケーションスキルは、１９４２年に発売されたアメリカの心理療法家カール・ロジャーズがの著書「カウンセリングとサイコセラピー」のなかで正式に発表されているものです。これまでのカウンセラーにとって当り前のように思われていた支持型のコミニケーションとは違い、クライアントを中心にカウンセリングを進めることが大切だと初めて主張した画期的なカウンセリング技法です。当時主流だった精神分析や認知行動療法の学者達からは「機械的にオツム返しさえしていればいいのか」と批判されて議論にもなりました。カール・ロジャーズもあまりにもスキルを傾倒しすぎであると考え直し、後に１９５１年に発売されたクライアント中心療法では単なるオウム返しではなく、カウンセラーの態度の方が大切なのではないかと主張するようになりました。

一方、日本においては、カール・ロジャースが「繰り返し」について表現した「リフレクション」という言葉が、「感情の反射」と訳されたことで、まるでオウム返しをするように素早く言葉を反射させるというイメージが強くなり、それが誤解を生んでしまいました。本来は、クライアントが感じている感覚を体感的に理解して、それを伝えることを確認するのが目的でしたが、当時はうまく伝わらず、今もうまく伝わってない部分もあります。

「繰り返し」についての背景をご理解いただいた上で、これからお伝えすることは学術的なことではなく、現場で傾聴をしているなかで、「繰り返し」をするメリットを３つご紹介したいと思います。

「繰り返し」のメリットについて

メリットその１　話し手が深く受け止めてくれているという感覚が持てる

あいづちよりより深く受け止めている感覚が持てるということです。あいづちが、「なるほど！」という簡単で短い言葉であるのに対して、繰り返しは話し手が使った言葉をそのまま繰り返すことで、より深く受容や共感の姿勢を深く伝えることができます。

メリットその２　話し手に正しく理解していることが伝わる

正しく理解していることが話し手に伝わるということです。話し手が伝えたい気持ちを表す言葉を繰り返すことで気持ちを深く理解してもらえているという感覚を得られるだけでなく、お互いにそれを共有できた感覚を持つことができ、信頼関係の構築にも繋がっていきます。

メリットその３　話し手が自分の気持ちを見つめるきっかけになる

話し手が立ち止まって、自分の気持ちを見つめるきっかけになるということです。話し手は自分がどんな言葉を使って話しているのか、いちいち意識していません。ですから、話し手が使った言葉をそのまま繰り返すことで、自分が発した言葉をもう一度受け取り、立ち止まって考えることができるようになります。これが非常に大切なことです。「私は本当にそんな言葉を使ったのだろうか？」「どういう意味があって発したのだろうか？」と自分を見つめ直すきっかけになります。ということで、繰り返しは、話し手が使った言葉だけで繰り返していきましょう。

「繰り返し」についてのまとめ

繰り返しのメリットを３つご紹介しましたが、この３つは連動していますので、自然と駆使できるようになることが大切です。ただ、最初はいきなりは難しいということであれば、ひとつずつ実践してみてください。

特に、メリット３が大事です。言い換えをして気持ちを推察したり、気づかせようと誘導するのではなく、話し手の言葉をそのまま受け止めて理解し、共感することが重要になります。最初は、言い換えをしたくなる人の方が多いですが、言い返したりせず、相手の世界に勝手に土足で入らないというスタンスで繰り返しができるように実践してみてください。

繰り返しについて書いている記事、傾聴に必要な３つの基本スキルについてもご覧ください。

併せて、傾聴とは？　傾聴力とは？　の記事もご覧ください。