1on1を導入している企業にお勤めの管理職の方からご相談をいただきました。私はこの方と面識はなく、メールにてご相談をいただきました。ご相談の内容は、「部下から聴いてもらうよりも具体的なアドバイス
特に大企業では1on1は導入されているケースが見受けられますが、それ以外ではあまり導入されていないというか、そもそも1on1とは何なのか?というレベルではないでしょうか。呼び名はどうであれ、傾聴と重なる部分は多いのかな?という印象がありますので、今回は。1on1についてご説明いたします。これを読めば、1on1についての理解が深まり、そして同時に組織内での傾聴の考え方が分かります。
目次
1on1について
1on1とは?
それでは1on1とは一体何のことなのでしょうか?1on1とは、正式には1on1ミーティングの略語で、上司と部下が1対1で行う対話のことです。1対1の対話というと、評価面談を想像する方も多いかもしれませんが、目的や実施方法に大きな違いがあります。
1on1は、たいていの場合、週に1回、最低でも月に1回実施します。また、1回の実施時間は30分程度で設定している企業が多いようです。もちろん会社やチーム、職種によっても異なりますが、「短いサイクルで定常的に実施する」ことが通常の面談と1on1の大きな違いです。
1on1の目的とは?
1on1は、部下の成長を促進することが目的です。上司が報告を求め、指摘するような「管理のための時間」ではありません。部下の現状や悩みに寄り添いながら部下の能力を引き出す「部下の育成のための時間」なのです。そのため1on1が終わったあとに、部下が「話してよかった」と思えることが、まず第一のゴールになります。
傾聴自体は、組織以外では「育成」との視点はあまり感じないかもしれませんが、傾聴をすることで、クライアントや話し手が成長を少しでも実感できたのであれば、それは結果的には「育成」と同じと捉えて問題は無いです。そして、傾聴も「話してよかった」とクライアントや話し手が感じてもらうという点においては同じ働きをしています。ということで、1on1と傾聴は似たような役割があると考えられます。
1on1で、アドバイスを求められた時、どうすべきか?
相談を受ける時によく起こること
これは1on1に限らないことですが、いわゆる広い意味での相談を受ける時にアドバイスはしないでおこうと思っているのに、傾聴では対応できないような気がしてやりずらいという経験がある方は結構いらっしゃるのではないかと思います。特に、1on1の場合にこのような懸念を感じるのは大まかに次の4つの理由が考えられます。
- 上司の相談スキル(傾聴力を含む)が備わっていない
- 上司が1on1を理解していない
- 部下が1on1を理解していない
- 組織から1on1の目的や具体的な内容の説明がない
上司の相談スキル(傾聴力を含む)が備わっていない場合
まず1についてですが、上司は「傾聴するか?アドバイスをするか?」の2者択一の視点になってしまいます。ですが、深く傾聴してから本人が問題に気づき具体的な解決策を見つけら
相談スキルを持っていない人に対して、「傾聴だけで聴かなければいけません」と言うのは意味がありません。傾聴を使って相談を受け切れないのであれば、その場はアドバイスをするはずです。
1on1を理解していない場合
次に2~4についてですが、これはそもそもの課題が同じです。何故、1on1をやらなければならないのか、そして1on1の具体的な進め方について上司や部下にちゃんと伝わっていない場合がほとんどです。1on1の目的、やるべきこと、そして決まり事が理解できなければ、上司が戸惑うのも理解できます。
ということで、一見、上司と部下の間のコミュニケーションの問題に見えますが、実は組織側から意図する1on1の仕組みが社員にちゃんと伝わっていないということが問題の本質になります。「部下が話を聴くよりアドバイスが欲しいと言われた時にどう対応すればいいのか?」という質問は、傾聴力をどう使うかという質問とは本質的に違うのです。「何故そのようなことを訊ねたくなるのか?」という視点で考えてもらうと分かりやすくなります。
今回、私にご相談をしてくださった管理職の方は、「私は主体的にやっているわけではない1on1をどうやって進めたらいいのか分からない」ということが見えてきます。会社からやれと言われているから仕方なくやっているのです。問題の本質はここにあります。個人のコミュニケーション能力とは別の問題、すなわち組織の仕組みの作り方、そして伝え方に問題があります。
質問の答えではなく、質問したくなった気持ちに注目する
今回のご相談から言えることは、「相談者は部下にどのように接すればよいでしょうか?」ではなく、「何がなくなれば相談者が一番楽になるのか?」という視点で考えると分かりやすくなります。質問をされた内容そのものの答えを出すのではなく、質問をしたくなった気持ちを理解し答えを考えていけばいいのです。
そして今回の場合、アドバイスをして欲しいと言ってきた部下の気持ちに目を向けてみてください。アドバイスをすることが正しい、間違っているという尺度で考える必要はありません。部下がアドバイスを求めてきたら、上司は普通にアドバイスをすればいいのです。
併せて、傾聴とは?の記事もご覧ください。
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