フォーカシングの5つのスキルと傾聴の関係について

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例えば、あなたが辛い人生の中で、あと3年生きてみようと決め、3年を何とか過ごせたとして、心の状態が平穏になったとします。そうしたら今度は、「深く悩んで、自分を見つめること」に取り組めるようになっていきます。この「深く悩んで、自分を見つめること」がとても大切です。悩みを深めていくことで、自分の人生を主体的に生きていくことが可能になっていきます。

 

悩むことに対して、深く悩む人と浅く悩む人がいます。深く悩む人は、深く生きている人であり、浅く悩む人は、浅く生きている人です。もし、自分の本質を突き詰めて、自分の人生を主体的に生きていきたいのであれば、深く悩むことが肝要です。深く悩んだ時間はあなただけの濃密な時間であり、これからの人生を大きく支えてくれます。それだけ自分の内側に向き合うことは、自分の心の声を聴くことができているということです。

 

この自分の心を聴く方法としてフォーカシングがあります。フォーカシングは臨床心理学者のユージン・ ジェンドリンが提唱した心理療法です。このフォーカシングと傾聴は非常に密接に関わり合う心理療法です。

 

そこで今回は、フォーカシングの5つの方法と傾聴の関係について説明いたします。これを読めば、フォーカシングをしながら傾聴することで、悩みを深めながら自分の本質についての気付きを得ることができます。

目次

フォーカシングとは?

フォーカシングとは、まだ言語化できない体で感じられる微妙な感覚に注意を向け、そこから言語化していく心理療法です。カウンセリングが成功するときには、クライアントの心の中でこのような変化が生じています。カウンセリングで心が変化していく瞬間に起こる現象でもあります。フォーカシングを学ぶことによって、自分自身の気持ちを深く理解できるようになったり、何か決断をしないといけないときに納得のいく決断ができるようになったりします。

 

また、カウンセリングや心理療法を学ぶ場合、カウンセラー自身の訓練として活用することもできます。文章を書いたり、芸術的な作品を生み出すときに、自分の実感がうまく表現できているか確認することにも使うことができます。

 

臨床心理学者のユージン・ ジェンドリンは来談者中心療法の生みの親であるカール・ロジャースの共同研究者であり、ロジャースの創始した来談者中心療法の実践の中からフォーカシングを体系化していきました。

 

来談者中心療法とフォーカシングの関係についてですが、両者は別個の体系であるという主張と、フォーカシングは来談者中心療法の本質であるとする主張の2通りがあり、意見が割れていますが、私個人的には後者である来談者中心療法の本質と考えておりますので、この点を踏まえながら、ご説明を続けさせていただきます。

フォーカシング~自分の心の声を聴く5つのスキルについて

まだ言語化できない体で感じられる微妙な感覚に注意を向け、そこから言語化していくこと。これがフォーカシングですが、具体的に言えば、あなたの内側に生まれるちょっとした「違和感」や「ざわめき」にはあなたにとって大切な意味が込められており、あなたに何かを語ってくれているのです。ここに関心を持ち、あなたへのメッセージを読み取っていくのです。この作業をこれからご紹介する5つのスキルを使って、導いていきます。

スキル1 何が出てきても、ただ認めて眺める

まず肯定的そして否定的に評価することなく、ただ出てきたことに対してそのまま認める。そして眺める、ということです。出てきたことを「分かったよ」と認めて、眺める。それだけですが、これがフォーカシングで最も重要なプロセスです。

スキル2 間が取れてくる

ただ認めて、眺めることを繰り返していくと、自然と自分と自分の内側との間に「間」や「距離」が出てきます。「間」が取れてくると、この「感覚」を認めている自分の存在を自然と感じ取ることができるようになっていきます。

スキル3 思いやりを持ちながら、問いかける。そして待つ

「間」が取れるようになったら、自分の内側の感覚に対して、問いかけをしてみます。「一体、何があったの?どうしたの?」と訊いてみてください。このときに、思いやりの気持ちを持って、自分の内側の感覚が何を言いたいのか、ただひたすら待ちましょう。この姿勢がフォーカシングにおいてとても大切な姿勢です。

スキル4 内側から出てきたものをそのまま受け入れる

自分の内側の感覚が何かを発し出したら、それがどうであれそのまま受け入れましょう。やさしい気持ちを持ちながら、そして適度な距離感を持って、受け入れましょう。

スキル5 内側に響かせて、確認する

そのまま受け入れたら、今度はそれが自分にとってしっくりくるかどうか確認します。このとき内側の感覚に問いかけ、響かせながら当てはまる感覚を模索してください。またそこで新たに出てきた感覚は、どんな感覚であれそれを受け入れましょう。そしてまた内側の感覚に問いかけ、響かせながら当てはまる感覚を模索してください。これを繰り返していくことで、自分の感覚がはっきりとしてきて、自分の心の声を聴くことができます。

傾聴してくれる人がいると、フォーカシングはもっと深まる

フォーカシングの5つのスキルを使って、自分の内側に深く入り込んでみてください。自分の内側の感覚がどんなだったか、自分の心の声がどんな声だったか聴くことができます。うまくやる必要はありません。我流でもいいので、あなたの内側の感覚がどんな感じであるか触れてみることから始めてみてください。

 

ただ、実際にやってみて、「自分ひとりで、自分の心の声を聴くのは難しい」と言う方もいらっしゃるかと思います。そういう場合は、誰かがしっかり側にいてくれて、「聴いてくれている」だけで自分の内側の感覚に入っていく体験は深まっていきます。

 

例えば、ひとりでひたすら悩んでいても時間だけが経過して、無駄な時間を過ごしてしまった、と言う人も少なくは無いと思います。それはやはり、悩みを「深く、丁寧に聴いてくれる人」や「傾聴してくれる人」に聴いてもらうことです。それだけで、「悩みの体験の質」が深くなっていきます。自分ひとりで悩んでいるより、心を込めて丁寧に聴いてくれる人に話した方が自分を見つめることに対しての集中力が格段に上がります。そうすると、「悩みながら自分を深めていく体験」が一気に深まっていきます。

 

そして、深まれば深まる程、言葉が少なくなってきます。声が低くなり、沈黙の時間が長くなります。この状態になると、自分の内側から何だか分からないけど、でも何かが出てくるような感じになり、自分の心を弄るようになっていきます。でも、話を聴いてくれる人が側に居るという安心感があるので、二人で居るのにひとりで居るような一種の他者との同化現象が起こります。

 

この状態で、自分の話を続けていくと、意外な答え生まれてきたりします。「あぁ!そういうことだったのか!」という気付きかもしれませんが、そういう発見が必ずあります。これは、悩んでいる人が恐る恐る自分の気持ちに目を向け、自分の気持ちを聴き、自分自身を深く掘り下げながら悩むことで、悩みが深められ、ある種の気付きを得るということです。

傾聴カウンセラーに話を聴いてもらう

それでは、周囲に安心して話や悩みを聴いてくれる人がいない場合はどうすればいいでしょうか。「一応、話は聴いてくれるけど、傾聴だけでは終わらず、アドバイスを押し付けてくる。徹底的に悩みを聴いてくれる人なんていない」と言う人は多いと思います。あとは、「聴いてくれるけど、相手に悪くて気が引けてしまう」「会社の同僚や友人、家族には気軽に話せる内容ではないので、自分のことを知らない第三者に聴いて欲しい」と言う人もいます。

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そういう場合は、プロのカウンセラーに依頼することです。特に傾聴に特化したカウンセラーや、傾聴を重視してくれるカウンセラーがお勧めです。カウンセリングって、心の病を患っている人が受けるものと言うイメージがありますが、決してそういうものではありません。誰もが抱く人生の様々な悩みをプロのカウンセラーに相談に行く方はたくさんいます。今から10年くらい前は欧米では普通にそういう方は多かったですが、日本にはあまりいない、というのが実情でした。ですが、今では日本でも人生の様々な悩みを抱えている方がカウンセリングを受けるのは当り前の流れに変わってきています。

 

秘密厳守ですし、余計な事を言われて嫌な思いをする可能性も素人の方よりは格段に低いし、安全です。確かに、カウンセラーと言っても、ピンからキリまでいます。苦しみに寄り添いながら聴いてくれないカウンセラーや傾聴を軽んじていたり、傾聴を全く知らないカウンセラーもいます。寄り添いながら聴くことができずに、ジャッジをしたりアドバイスを押し付けてくる人がカウンセラーを名乗っているケースもあります。

 

悩んで、悩んで、悩み苦しんで、最終的にカウンセラーの所に行っても、「分かってもらえた感じ」がしない。だからカウンセリングを受けたくないという人もいます。それではいいカウンセラーをどうやって探したらいいのでしょうか。それは、口コミや紹介が一番です。あとは、お近くの大学の心理センターなどにお問い合わせしてみるのもよろしいかと思います。心理関係の資格を持っていても、苦しみに寄り添いながら聴いてくれないカウンセラーは普通に存在します。だから資格の有無を判断基準にしてはいけないのです。

 

私は、悩んで、悩んで、悩み苦しんで、最終的にカウンセラーの所に行っても、「分かってもらえた感じ」がしない方をサポートしていきたいと考えています。

 

併せて、傾聴とは?の記事もご覧ください。

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