あなたの周りにある同調圧力に対しての正しい向き合い方を傾聴から考察する

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以前にも同調圧力についての記事を2つ投稿しました。両方とも新型コロナウイルスワクチンに纏わる記事で、1つは学校での同調圧力、もう1つは企業での同調圧力についてですが、この同調圧力についてのご相談がとても増えてきています。特に今年に入って、ワクチン接種を通して予期せぬ同調圧力について悩まされたり、考えたりする機会が増えた人が多いと思います。

 

ただ、確かにワクチン接種がきっかけで同調圧力がクローズアップされてきていますが、元々日本には同調圧力が根強く存在していて、今に始まったことではないのです。いろんな方とお話をしていて感じるんですが、この視点が欠けている人がとても多いなと思います。ワクチン接種とは関係無く、これは残念なことだと強く思っています。あなたが生きている日本社会の基本的な仕組みが分かっていないと、必要以上に息苦しさを感じてしまいます。

 

戦後に比べたら、確かに時代も大きく進歩していますし、今ではインターネット社会が出来上がり、個人ではSNSを介しての人との交流が当たり前の世の中になってきています。ですが、そうであっても日本社会が抱えている本質的なこと、そして人としての本質的なことは実は何も変わっていないのです。

 

そこで今回は、元々根強く存在している同調圧力についての考え方と向き合い方について傾聴者からの視点でご説明いたします。これを読めば、同調圧力に悩んでいる人が本来の自分自身を取り戻し、必要以上に息苦しさを感じないで生きていくことができるヒントを得ることができます。

目次

時代の流れから見る今の時代の同調圧力について

まず、時代背景から考えていきますが、平成の時代までは「秩序」から発生していた同調圧力が、令和の時代になってからは「正義」から発生しています。主に昭和の時代は日本社会の基盤を作るべく、「秩序」を重んじて安定した社会にしようという時代であり、平成の時代はそれを継承しながら発展させてきた時代であるとも言えます。

 

それに対して令和の時代は法令順守が一般化され、それが個人にも波及してきているので、組織だけではなく個人も「正義」を重視した時代に変化してきています。これはSNSが普及して、誰もが自由に個人の意見を発信することができる環境になったことも一因かと思います。

 

この「正義」というのが実は曲者で、「正義」を盾に人は「正しさ」を追求していきます。自分の中に向けられてきた「正しさ」を今度は周りにも追求していきます。もちろん令和の時代であっても、「秩序」を重視はしています。特にコロナ禍で、世の中が一変したため新しい「秩序」を作っていかなくてはなりません。しかしこれだけではなく、今は「正義」も要求されるので、「正しい」という尺度で周りを判断する傾向が強くなってきました。

 

長引くコロナ禍で、これまで以上に息苦しい日常を感じている人も多いはずです。例えば、営業している飲食店は嫌がらせや密告をされ、マスクの有無で電車内ではけんかが起きる。これは周囲に対して「秩序」と「正義」を求めている結果です。このような周囲と同じ言動を強制することを同調圧力と言うものであり、日本では学校や会社などあらゆる場所で多発しているのです。

 

今は分かりやすくコロナを例にご説明しましたが、何もこれはコロナに限ったことではありません。あなたの身の周りで起こっていること全てです。抽象的な例ではありますが、例えば、あなたはある目的を達成させるためにAという手段とBという手段があって、どちらを選んでもいいとします。でも、一般的にはAという手段を選ぶのが普通であったりすれば、本来Bという手段は選びにくいです。

 

でも、どっちを選んでもいいわけだからBという手段を選んだとします。そうすると、周りから「何故Bなんだ!」と責められたり、あとは、別の場面であなたがBを選んだことを力のある人に告げ口されたりして、結局あなたは周りの顔色を見ながらAという手段を選ばざるを得ない。選びたくないものを選んだこと、そして周りから責められたことで、嫌な思いをするのです。でも、こんなことは日常的にたくさんあることです。

 

だからあなたは同調圧力に囲まれて生きているということは当り前のことであると認識して欲しいと思っています。

日本社会で同調圧力が発生する3つの要因

それでは同調圧力についてもっと具体的に深堀していきたいと思います。何故、同調圧力が発生するのか?について考えていきます。私自身が考えている要因としては3つあります。

要因の1つ目:「閉鎖性」

まずは、「閉鎖性」があります。日本は島国であり他国に比べて移民も少ない。さらに企業では終身雇用、年功序列、企業別組合があり、転職による移動がしづらく、閉鎖性が色濃くなります。学校においても、部活など教科以外の活動が学校単位で行われます。そのため、生活のすべてを学校に依存し、人間関係も固定されていきます。このような閉鎖的な組織や集団が日本のあらゆる場所にあります。

 

このような環境にいると、どうしてもその組織や集団の尺度で物事を考えるようになり、その世界にとっての「秩序」と「正義」というものが自然発生的に生まれていきます。このような空気感が村社会特有の「みんな一緒が一番良い」という考え方を作り出し、逆にこの考え方を否定すると「出る杭は打たれる」ということで、バッシングと言う名の同調圧力に見舞われるということになります。

要因の2つ目:「同質性」

次に、「同質性」があります。これは「平等性」と言い換えてもいいかもしれません。日本は他国に比べて異民族の割合が低いので、宗教や価値観、文化に大きな違いがなく、同質性が高くなる傾向があります。“同じ日本人”という意識があるので、共有すべき規範のハードルが高くなってしまいます。海外の電車内で通話している人を見ても何も思いませんが、国内で同様の光景を目にすると気になってしまうのも、同じ日本人という意識があり、規範の期待値が上がってしまうのです。みんな平等に規範の期待値を上げていくのです。

要因の3つ目:「個人の未発達」

最後に、「個人の未発達」があります。これは「自立心や独立心の欠如」という意味合いです。海外では個人ごとに仕事を割り当てられることがほとんどですが、日本では課やチームで仕事をすることが多いのが現状です。本来、各人の職務範囲が決まっていれば定時で帰りづらいこともないですし、休暇も取得しやすいはずです。

 

さらに、学校ではリレーや組体操、給食当番など共同作業が強いられ、連帯責任として部活動のチーム全体が大会への出場ができないケースも多くあります。PTAや町内会も全員参加で、筋書きされた会議進行に異議を唱えれば白い目で見られることは誰でも経験があるはずです。

 

このように組織だけではなく社会的に、個人よりも全体を重視する傾向が日本では強いのです。ということは、それだけ個人として確立していくことが難しいとも言えるのです。何か起きたとき、個人としてちゃんと発達した自己を確立していないので、軸がブレやすく対処に困ってしまうことも多く、結局は「みんなと一緒」という考え方で判断し、周りに御しやすい人というポジションに収まってしまうのです。

同調圧力の発生を促すもの

同調圧力が発生する要因として3つご説明しましたが、この3つの要因を促すものがあります。ここでは、このことについても触れてみたいと思います。まず、促すものは何かというと、「共同体主義」というものです。これは集団主義についての1つの考え方でありますが、簡単に言うと、20世紀後半にアメリカを中心に発展してきた共同体(コミュニティ)の価値を重んじていこうという考え方です。

 

因みに共同体(コミュニティ)の一員と自覚し、帰属することで精神的な安定を得ようとするのは「共同体意識」になります。一方、「絆」や「結束」などを提唱し、一致団結を最優先するのが「共同体主義」になります。現実的な利益や必要性を超越し、とにかく共同体(コミュニティ)のために団結するというある種のイデオロギーです。

 

共同体主義が発生する要因は、前項でご説明した同質的、閉鎖的な日本の社会構造にあり、「自分がそうだから同質なメンバーも同じ言動をすべき」と安易に考えてしまい易いのです。閉鎖性と同質性、個人の未発達という3要因と共同体主義が相互に補完し合い、同調圧力を生んでいるのです。

 

ただし、このような同調圧力は戦後日本の復興には機能してきたので、一概に「同調圧力=悪」とは言えないところではあります。均質的な人材と統制のとれた行動が求められ、同質的で従順な人が好まれたのです。欧米の技術を模倣し、更に飛躍していく為には日本人労働者の個性や創造性よりも決まった業務を迅速に行える人、つまり前途の同質的で従順な人が必要だったのです。

 

しかし、IT化に伴い根本から社会構造が大きく変わった今現在においても、このような昭和的な工業社会の規範が転換していないので、同調圧力の問題点が表面化しているのです。

正義とSNSとの関わりについて

次に特筆すべきことですが、同調圧力を表面化させ、更に過激にしているのはSNSではないかと思います。特に昭和の時代の同調圧力は縦社会(秩序)からの力の方が強い。例えば、それは政府などの体制側からの圧力、下僕のような貢献を求める企業のルール、上司によるパワハラがあります。

 

しかし、今現在ではSNSに代表される横社会(正義)からの力が強力になっています。SNSの無数の声によって「正義」のお墨付きが与えられると、それに異議を唱えるものは容赦なく糾弾されます。姿も見えず、名前も分からない人々からの水平方向からの圧力に抵抗することは容易ではなく、権力者でさえも公の場から退場することを余儀なくされます。ということで、その大きな「正義」に同調することが求められるのが令和の時代の日本のもう一つの現状です。

正義とは正しいものであるからこそ曲者である

「正義」が間違いなく正しいものであっても、異なる意見を言える余地と尊重できる土壌が必要で、それが社会の健全化に繋がりますが、今の日本社会は残念ながらそうではなのかもしれません。問答無用で排除するだけでは何の前進もありません。かえって、同調圧力は強まり、社会の息苦しさは増すばかりです。

 

どんなミスや誤りでも他者を徹底的に糾弾し、追放する事例は世界的には「キャンセルカルチャー」と呼ばれていますが、このキャンセルカルチャーと日本の同調圧力の相性はかなり良いのです。ここが曲者になっている所以です。

 

例えば、当時の東京オリンピックの大会組織委員会会長だった森喜朗元総理大臣が女性蔑視発言で辞任を余儀なくされました。ここでは事の詳細は省きますが、確かに森喜朗元総理大臣の発言の内容について非常に問題のある発言であったと思います。

 

ただ、ここで考えていただきたいのが、もし仮に男性に比べて女性の方が話が長く、理事会に支障が生じたということであれば、まずはきちっとそのエビデンスを出す必要があります。そしてこのエビデンスに基づいて、きちんとひとつの意見として申し述べることは何の問題もないはずです。ただ、今の日本社会は残念ながら異なる意見を言える余地と尊重できる土壌がないように思われます。

 

森喜朗元総理大臣の発言は女性蔑視であるという「正義」が表に顔を出し、そこにSNSが乗っかって叩くという構図が確立してしまっているように思います。森喜朗元総理大臣を庇うつもりは全くありませんが、正義と言うのは正しいからこそ人を傷つけてしまう曲者でもあります。

社会構造から見てフリーランスの人の生き方がひとつのヒント(傾聴)になる

一個人が同調圧力の社会に対して向き合うにはどんな方法があるのだろうかと常々考えてきましたが、これは同調圧力の3要因である閉鎖性、同質性、そして個人の未発達と逆の行動を取ればいいと思います。これはひとつの考え方ではありますが、まずは自分自身の幅を広げていくことから始めたらいいです。

 

例えば、どの世界でも同じことですが、特定のグループや派閥に近づきすぎず、等距離・等間隔での交流を楽しみましょう。また会社員であれば、共同体主義を排除するために共同体内での「役割と行動の引き離し」を行うべきです。共同体(組織)において重要なのは貢献度や結果であるはずなので、「自分の仕事さえ終われば、無駄な残業はしない」とはっきり言うべきです。このように「共同体内での役割を果たす限り行動は制約されない」という考え方に切り替えることが重要です。

 

どこの世界でも自分のペースで生きている人を見ると、支持を受けやすい傾向があります。周りに流されること無く、自分の軸を持って行動している人は周りからすると眩しく見えるのです。ここまで来ると誰も叩きません。出る杭は受け入れられるのです。この境地に辿り着くのは時間が掛かりますが、まずはそういう人を探して、その人の近くに居るようにしましょう。これが同調圧力に正しく向き合うコツです。

 

自分一人では何もできないと思いますが、できている人の近くに居て、その人のことを細かく観察して、その人の人間性を学び、その人の考え方を盗み、取り入れることをしていただければと思います。そうすると、段々あなたの軸が出来てきて、自然と行動できるようになります。

 

これを実践している人はフリーランスの方に多くいらっしゃいます。もし、あなたの近くにフリーランスの方がいらっしゃれば一度話を聴いてみるのもお勧めです。一般的にフリーランスの方は同調圧力とは反対側で生きている人が多いので、生き方の参考になるかもしれません。一ヶ所に留まるという考え方ではないので、同質性、閉鎖性、個人の未発達とは逆のことをしています。

 

初めは面食らう話が飛び出してくるかもしれませんが、こういう姿勢は傾聴にも繋がっています。ちゃんと相手の話を聴くこと。その話の本質を探り、理解すること。その人の想いに寄り添い、受け入れ、自分自身と同化していくこと。こんなことを意識することで、きっとあなたもその人のような生き方を踏み出せるに違いありません。

 

まずその人の近くに居ること。これが出来ると傾聴のきっかけとなり、傾聴をすることであなた自身が本来の自分自身を取り戻します。そうなると自分の軸が分かり、外側(同調圧力)を気にしなくなるので息苦しさを感じること無く生きていくことができます。

 

これからも同調圧力は無くなりません。手を変え品を変え、同調圧力が顔を出します。それでも本来の自分自身を取り戻しながら、自分の軸が確立していけば、何時いかなる時に同調圧力と出会っても、華麗にスルーすることができます。決して同調圧力を恐れること無く、あなた自身のこれからの人生を有意義にお過ごしください。

 

併せて、学校での集団接種と同調圧力についてカウンセラーができることの記事と、社内の同調圧力に関するお悩みを傾聴カウンセリングではどう対処したかの記事もご覧ください。

 

そして、傾聴とは?の記事もご覧ください。

 

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